あへなし。 間違えやすい古語

竹取物語『火鼠の皮衣』 わかりやすい現代語訳・解説 / 古文 by 走るメロス

あへなし

『枕草子』の現代語訳:103 『枕草子』の現代語訳:103 清少納言(康保3年頃(966年頃)~万寿2年頃(1025年頃))が平安時代中期に書いた 『枕草子(まくらのそうし)』の古文と現代語訳(意訳)を掲載していきます。 『枕草子』は中宮定子に仕えていた女房・清少納言が書いたとされる日本最古の女流随筆文学(エッセイ文学)で、清少納言の自然や生活、人間関係、文化様式に対する繊細で鋭い観察眼・発想力が反映された作品になっています。 このウェブページでは、『枕草子』の『大納言殿の参りたまへるなりけり。 御直衣、指貫の紫の色~』の部分の原文・現代語訳を紹介します。 参考文献 石田穣二『枕草子 上・下巻』(角川ソフィア文庫),『枕草子』(角川ソフィア文庫・ビギナーズクラシック),上坂信男,神作光一など『枕草子 上・中・下巻』(講談社学術文庫) スポンサーリンク [古文・原文] 179段(続き) 大納言殿の参りたまへるなりけり。 御直衣、指貫の紫の色、雪に映えていみじうをかし。 柱もとに居給ひて、(伊周)「昨日、今日、物忌(ものいみ)に侍りつれど、雪のいたく降り侍りつれば、おぼつかなさになむ」と申したまふ。 「道もなしと思ひつるに、いかで」とぞ御答へ(おいらえ)ある。 うち笑ひ給ひて、「あはれともや御覧ずるとて」などのたまふ御有様ども、これより何事かはまさらむ、物語にいみじう口にまかせて言ひたるに違はざめりと、おぼゆ。 宮は、白き御衣(おんぞ)どもに紅の唐綾(からあや)をぞ上に奉りたる。 御髪(みぐし)のかからせ給へるなど、絵に描きたるをこそ、かかることは見しに、現(うつつ)にはまだ知らぬを、夢の心地ぞする。 女房と物言ひ、戯れ言などしたまふ御答へ(おいらえ)を、いささか恥づかしとも思ひたらず、聞え返し、空言などのたまふは、あらがひ論じなど聞ゆるは、目もあやに、あさましきまで、あいなう面ぞ赤むや。 御菓子(おんくだもの)まゐりなど、とりはやして、御前にも参らせ給ふ。 (伊周)「御几帳(みきちょう)の後なるは誰ぞ」と問ひ給ふなるべし。 さかすにこそはあらめ、立ちておはするを、なほ外へにやと思ふに、いと近う居給ひて、物などのたまふ。 まだ参らざりしより聞きおき給ひける事など、「まことにや、さりし」など、のたまふに、御几帳隔てて、よそに見やり奉りつるだに、恥づかしかりつるに、いとあさましう、さし向ひ聞えたる心地、うつつとも覚えず。 行幸(ぎょうこう)など見るをり、車の方にいささかも見おこせ給へば、下簾(したすだれ)引きふたぎて、透影(すきかげ)もやと、扇をさし隠すに、なほいと我が心ながらもおほけなく、いかで立ち出でしにかと、汗あえていみじきには、何事をかは答えも聞えむ。 かしこき陰と捧げたる扇をさへ取り給へるに、振りかくべき髪のおぼえさへあやしからむと思ふに、すべてさる気色もこそは見ゆらめ、疾く立ち給はなむと思へど、扇を手まさぐりにして、絵のこと、「誰が描かせたるぞ」など、のたまひて、とみにも賜はねば、袖を押しあてて、うつぶし居たるも、唐衣に白い物うつりて、まだらならむかし。 久しく居給へるを、心なう、苦しと思ひたらむと心得させ給へるにや、「これ見給へ。 これは誰が手ぞ」と、聞えさせ給ふを、(伊周)「賜はりて見侍らむ」と申し給ふを、「なほ、ここへ」と、のたまはす。 「人をとらへて立て侍らぬなり」と、のたまふも、いと今めかしく、身のほど合はず、かたはらいたし。 人の草仮名(そうがな)書きたる草紙など取り出でて御覧ず。 「誰がにかあらむ。 かれに見せさせ給へ。 それぞ、世にある人の手は皆見知りて侍らむ」など、唯答へさせむと、あやしきことどもをのたまふ。 楽天AD [現代語訳] 179段(続き) (殿様ではなく)大納言殿・伊周(これちか)が参上されたのであった。 御直衣、指貫の紫の色が、雪に映えてとても立派である。 柱のところにお座りになられて、 「昨日、今日、物忌でしたが、雪がひどく降りましたので、あなた様のことが気がかりで。 」と申し上げる。 「雪で道もないと思いましたが、どうしてよくいらっしゃいました。 」とお答えになられる。 伊周殿はお笑いになられて、「よくぞいらしてくれたと御覧になって下さるかと思いまして。 」などとおっしゃるご様子は、これより素晴らしいやり取りなどあるだろうか、物語にただ口に任せて登場人物たちに言わせているのと違いがないように(あまりに出来すぎた気の利いたやり取りであるように)、思われた。 中宮様は、白い御下着を重ね着して、その上に紅の唐綾をお召しになっておられる。 それに御髪がかかっていらっしゃるところなど、絵に描いた姫君であれば、このような美しい人も見たことがあるが、現実にはまだ知らなかったので、夢見心地のような感じがする。 大納言様は女房とお話をされて、戯れの冗談などをおっしゃる、そのご返事を少しも気後れした感じもなく、聞いて返し、作り話などをおっしゃる時には、反対して論じ合ったりするのを聞くのは、目がちかちかとするようで、情けないほどに、意味もなく私の顔が赤くなってしまう。 くだものを召し上がったりして、座をもてなして、中宮様にもお勧めになられる。 「御几帳の後ろにいるのは誰か」とお尋ねになられている。 そそのかすようなお答えをしたのだろうか、立ち上がっていらっしゃるのを、また他のところへ行くのだろうと思っていたが、とても近いところにお座りになられて、話しかけてこられる。 まだ参上する前から聞いていた噂話などについて、「本当なのか、そんなことがあったのか。 」などとおっしゃるが、御几帳を隔てて、他からお見上げしていただけでも、恥ずかしい思いだったのに、とても思いがけず、差し向かいでお話することになった気持ちは、これが現実だとは思えなかった。 行幸(ぎょうこう)などを見物する時、大納言様が車の方を少しでも見てきたならば、下簾を完全に閉ざして、隙間から姿の影が見えてはいけないと、扇をかざして隠すのに、やはりまったく自分の気持ちながらも身の程知らずなことであり、どうして宮仕えなどしようと思ったのかと、汗をびっしょりかいて大変なことになっているのだから、何をお答えすることなどできるだろうか。 頼みの陰として捧げていた扇さえ取り上げられてしまい、振りかけて顔を隠す髪の感じさえ恥ずかしいと思うと、自分のすべてがみすぼらしく思われてしまい、早く立ち去ってほしいと思うのだけれど、扇を手でもてあそびながら、絵のことについて、「誰が描かせたものなのか。 」などとお聞きになられて、すぐに返してもくださらないので、顔を袖に押し当てて、うつむいて座っていたのだが、唐衣におしろいの白いのが付いてしまい、顔色もまだらになってしまった。 長く私の側にいらっしゃるのを、思いやりがないことで、私が苦しく感じているのだろうと分かって下さったのだろうか、中宮様が「これを見てごらんなさい。 これは誰の手ですか。 」と申し上げると、大納言様が「こちらに頂いて見てみましょう。 」と申されるのを、「やはり、こちらへいらっしゃって下さい。 」とおっしゃられる。 「人を捕まえて立たせないのです。 」とおっしゃるのも、とても洗練された物言いで、私の身のほどには合わず、居心地が悪く気まずいものである。 中宮様は、誰かの草仮名(そうがな)を書いた本などを取り出して御覧になられている。 「誰の手なのでしょうね。 清少納言に見せてみてください。 博識な彼女なら、世の中にある人の手はすべて見知っているでしょうから。 」などと、ただ私に答えさせようと、無茶なことなどをおっしゃられる。 スポンサーリンク [古文・原文] 179段(終わり) 一ところだにあるに、また前駆(さき)うち追はせて、同じ直衣(なほし)の人参り給ひて、これは今少しはなやぎ、猿楽言(さるがくごと)などしたまふを、笑ひ興じ、我も、なにがしがとある事、など、殿上人の上など申し給ふを聞くは、なほ、変化(へんげ)の者、天人などの下り来たるにやと覚えしを、侍ひ馴れ、日頃過ぐれば、いとさしもあらぬわざにこそはありけれ。 かく見る人々も皆、家の内出で初めけむほどは、さこそは覚えけめなど、観じもてゆくに、おのづから面馴れぬ(おもなれぬ)べし。 物など仰せられて、「我をば思ふや」と問はせ給ふ御答え(おいらへ)に、(清少納言)「いかがは」と啓するに合はせて、台盤所(だいばんどころ)の方に、鼻をいと高うひたれば、「あな心憂(こころう)。 虚言(そらごと)をいふなりけり。 よしよし」とて、奥へ入らせ給ひぬ。 いかでか虚言にはあらむ、よろしうだに思ひ聞えさすべき事かは、あさましう、鼻こそ虚言はしけれ、と思ふ。 さても、誰か、かくにくきわざはしつらむ、おほかた心づきなしと覚ゆれば、さる折も、おしひしぎつつあるものを、まいていみじうにくしと思へど、まだうひうひしければ、ともかくもえ啓し返さで、明けぬれば下りたるすなはち、浅緑(あさみどり)なる薄様(うすよう)に、艶(えん)なる文を「これ」とて来たる、開けて見れば、 (中宮)「いかにしていかに知らまし偽りを空に糺(ただす)の神なかりせば となむ、御けしきは」とあるに、めでたくも口をしうも思ひ乱るるにも、なほ昨夜(よべ)の人ぞ、ねたく、にくままほしき。 「薄さ濃さそれにもよらぬはなゆゑに憂き身の程を見るぞわびしき なほ、こればかり啓し直させ給へ。 式の神もおのづから。 いと畏し(かしこし)」とて、参らせて後にも、うたて折しも、などてさはありけむと、いと嘆かし。 楽天AD [現代語訳] 179段(終わり) お一人でも持て余しているのに、また先払いの声を掛けさせて、同じような直衣姿の人が参上して、この方はもう少し華やかな感じで、軽口の戯れなどをおっしゃるのを、女房たちは笑って面白がり、私も、誰かれがこうこうでしたということなど、殿上人の噂話など申し上げるのを聞いていると、変化の者か天人などがこの地上に下りてきたのかと思われるほどで、お仕えに馴れて何日も過ぎてみると、そんなに大したことでもなかったのだった。 こうして見ている女房たちも皆、自分の家から初めて宮仕えに出た当初は、そんな風に思っていたのだなどと、分かっていくうちに、自然と私も馴れていったようである。 何かお話などをされて、中宮様が「私のことを思ってくださるかしら。 」とお尋ねになったご返事に、「当然です。 」と申し上げるのに合わせて、台盤所の方で、大きな音でくしゃみをしたので、「まぁ、嫌なこと。 嘘を言ったのですね。 もういいです、もういいです。 」とおっしゃって、奥に入ってしまわれた。 どうして嘘などであろうか、どんなに強くお思いしていることかは、あきれたことだ、くしゃみのほうこそ嘘だったのだ、と思う。 それにしても、誰が、こんな憎たらしいことをしたのだろう、大体、くしゃみは気に入らないと思うから、出そうな時でも、押し殺しながらしているのに、ましてあんなに大きな音でするのは憎たらしいと思うけれど、まだ宮仕えしたばかりなので、とにかく言い返すこともできないで、夜が明けたので局に下がるとすぐに、薄緑色の薄様のおしゃれな手紙を、「これ」と言って持ってきたので、開けてみると、 (中宮)「いかにしていかに知らまし偽りを空に糺(ただす)の神なかりせば とおっしゃっているご様子です。 」と書いてあるので、素晴らしいと思うし、我が身を情けなくも思って気持ちも乱れるしで、やはり昨夜のくしゃみの人が、妬ましく憎たらしい。 (清少納言)「薄さ濃さそれにもよらぬはなゆゑに憂き身の程を見るぞわびしき やはり、この歌だけはどうにかしてお伝えしてください。 式の神もご照覧して下さいましょう。 嘘をつくなどは畏れ多いことです。 」と書いて返事を差し上げた後でも、いやな折も折、どうしてあの人はくしゃみなどしたのだろうと、とても嘆かわしい。

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「あへなし」「…ものは」: 個別指導学び舎 塾長日記

あへなし

<例>• <例>• <例>• <例>• <例>• 言へども• あはれに• やうやう• かうかう• にはかに• きのふ• すなはち• 書かむをかしき• からうじて• まうで• よそほひ• わざはひ• をさなき (2)次の下線部をそれぞれ現代仮名遣いに直して、すべて平仮名で書きなさい。 風の音、虫の音など、 はたいふべきにあらず。 親のいさめを 思ひかへせば• 新しくつくりて まゐらせたまへかし。 うち向かひては思ふほども続けやらぬ心の色もあらはし• 食事を あてがはざるゆゑ• 食に あふことわづかなり• 鴎鳥に従ひて遊ぶ• 男も女もことばの文字 いやしう使ひたるこそ• 「観音助け給へ」と なむ迷ひける 解答 (1)• いえども• あわれに• ようよう• こうこう• にわかに• きのう• すなわち• かかん• おかしき• かろうじて• もうで• よそおい• わざわい• おさなき (2)• はたいうべきにあらず• おもいかえせば• まいらせたまえかし• うちむかいてはおもうほども• あてがわざるゆえ• あうことわずかなり• おうちょうにしたがいてあそぶ• いやしゅうつかいたるこそ• なんまどいける.

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「あへなし」「…ものは」: 個別指導学び舎 塾長日記

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和歌 文章 番号 國民文庫 群書類從 〔389〕 右大臣阿倍御主人は 左大臣安倍のみむらじは。 〔390〕 財(たから)豐に 家廣き人にぞおはしける。 寶ゆたかに 家廣き人にぞおはしける。 〔391〕 その年わたりける唐土船の 王卿(わうけい)といふものゝ許に、 文を書きて、 其年きたりけるもろこし船の わうけいといふ人のもとに 文を書て。 〔392〕 「火鼠の裘といふなるもの 買ひておこせよ。 」とて、 火ねづみの皮といふなる物 買ておこせよとて。 〔393〕 仕うまつる人の中に 心たしかなるを選びて、 つかふまつる人の中に 心たしかなるを撰て。 〔394〕 小野房守 といふ人をつけてつかはす。 小野房盛 と云人をつけてつかはす。 〔395〕 もていたりて、かの浦に居(を)る 王卿に金をとらす。 もていたりてかのうらにをる わうけいに金をとらす。 〔396〕 王卿 文をひろげて見て、返事かく。 わうけい 文をひろげて見て返事かく。 〔397〕 「火鼠の裘 火鼠の皮衣。 〔398〕 我國になきものなり。 此國になき物也。 〔399〕 おとには聞けども 音にはきけども。 〔400〕 いまだ見ぬものなり。 いまだ見ずさぶらふ物也。 〔401〕 世にあるものならば、 世にある物ならば。 〔402〕 この國にももてまうで來なまし。 此國にももて詣來なまし。 〔403〕 いと難きあきなひなり。 いとかたき商也。 〔404〕 しかれども もし天竺にたまさかに もて渡りなば、 然ども 若天ぢくに逅に もて渡りなば。 〔405〕 もし長者のあたりに とぶらひ求めんに、 若ちやうじやのあたりに とぶらひもとめんに。 〔406〕 なきものならば、 なき物ならば。 〔407〕 使に添へて金返し奉らん。 」 といへり。 使に添てかねをば返し奉らん といへり。 〔408〕 かの唐土船來けり。 彼唐ぶねきけり。 〔409〕 小野房守まうで來て 小野房盛詣きて。 〔410〕 まうのぼるといふことを聞きて、 まうのぼると云事を聞て。 〔411〕 あゆみとうする馬 をもちて あゆみとく(うイ)するむま をもちて。 〔412〕 走らせ迎へさせ給ふ はしらせむかへさせ給ふ。 〔413〕 時に、馬に乘りて、 時に馬に乘て。 〔414〕 筑紫よりたゞ七日(なぬか)に 上りまうできたり。 筑紫より唯七日に のぼりまふで來り。 〔415〕 文を見るに 文をみるに。 〔416〕 いはく、 いはく。 〔417〕 「火鼠の裘 火ねずみの革衣。 〔418〕 辛うじて、人を出して求めて奉る。 からうじて人を出して取て奉る。 〔419〕 今の世にも昔の世にも、 今のよにも昔の世にも。 〔420〕 この皮は 容易(たやす)くなきものなりけり。 此皮は たはやすくなき物也けり。 〔421〕 昔かしこき天竺のひじり、 昔賢き天竺の聖。 〔422〕 この國にもて渡りて侍りける、 此國にもてわたりて侍りける。 〔423〕 西の山寺にありと聞き及びて、 公に申して、 西の山寺にありと聞及て おほやけに申て。 〔424〕 辛うじて買ひとりて奉る。 からうじてかい取て奉る。 〔425〕 價の金少しと、 あたひの金すくなしと。 〔426〕 國司使に申しゝかば、 こくし使に申しかば。 〔427〕 王卿が物加へて買ひたり。 わうけいが物くはへてかひたり。 〔428〕 今金五十兩たまはるべし。 今金五十兩たまはらん。 〔429〕 船の歸らんにつけてたび送れ。 舟のかへらんにつけてたび送れ。 〔430〕 もし金賜はぬものならば、 若金たまはぬ物ならば。 〔431〕 裘の質かへしたべ。 」 皮衣のしち返したベ。 〔432〕 といへることを見て、 といへる事をみて。 〔433〕 「何おほす。 なにおぼす。 〔434〕 今金少しのことにこそあンなれ。 いま金少の事に[にてイ]こそあ[なイ]めれ。 〔435〕 必ず送るべき物にこそあンなれ。 〔かならず送るベき物にこそあなれ。 〕 〔436〕 嬉しくしておこせたるかな。 」とて、 うれしくしてをこせたる哉とて。 〔437〕 唐土の方に向ひて伏し拜み給ふ。 唐のかたにむかひてふし拜み給ふ。 〔438〕 この裘入れたる箱を見れば、 此革衣入たる箱をみれば。 〔439〕 種々のうるはしき瑠璃を いろへて作れり。 草々のうるはしきるりを 色へてつくれり。 〔440〕 裘を見れば 紺青(こんじやう)の色なり。 皮衣を見れば こんじやうの色也。 〔441〕 毛の末には 金の光輝きたり。 毛のすゑには こがねの光しさゝり(きイ、やきイ)たり。 〔442〕 げに寳と見え、 うるはしきこと比ぶべきものなし。 寶とみえ うるはしき事幷ぶべきものなし。 〔443〕 火に燒けぬことよりも、 火に燒ぬ事よりも。 〔444〕 清(けう)らなることならびなし。 けうらなる事双なし。 〔445〕 「むべかぐや姫の このもしがり給ふにこそありけれ。 」 との給ひて、 うベかぐや姫 このもしがり給ふにこそありけれ との給ひて。 〔446〕 「あなかしこ。 」とて、 あなかしことて。 〔447〕 箱に入れ給ひて、 物の枝につけて、 箱に入たまひて ものの枝に付て。 〔448〕 御身の假粧(けさう)いといたくして、 御身のけさう(化粧)いといたくして。 〔449〕 やがてとまりなんものぞとおぼして、 やがてとまりなむ物ぞとおぼして。 〔450〕 歌よみ加へて持ちていましたり。 歌讀くはへてもちていましたり。 〔451〕 その歌は、 其歌は。 〔454〕 家の門(かど)にもて至りて立てり。 家の門にもていたりてたてり。 〔455〕 竹取いで來て 竹取出きて。 〔456〕 とり入れて、かぐや姫に見す。 取入てかぐや姫に見す。 〔457〕 かぐや姫 かぐや姫の。 〔458〕 かの裘を見ていはく、 皮衣をみて云く。 〔459〕 「うるはしき皮なンめり。 うるはしき皮・[きぬイ]なめり。 〔460〕 わきてまことの皮ならんとも知らず。 」 わきて誠の皮ならんともしらず。 〔461〕 竹取答へていはく、 竹とりこたへていはく。 〔462〕 「とまれかくまれ とまれかくまれ。 〔463〕 まづ請じ入れ奉らん。 先しやうじ入奉らん。 〔464〕 世の中に見えぬ裘のさまなれば、 世中にみえぬ皮衣のさまなれば。 〔465〕 是をまことゝ思ひ給ひね。 これを・[まこと]と思ひ給ね。 〔466〕 人ないたくわびさせ給ひそ。 」といひて、 人ないたく佗させ・[奉らせ]たまひそと云て。 〔467〕 呼びすゑたてまつれり。 よびすへ泰れり。 〔468〕 かく呼びすゑて、 かくよびすへて。 〔469〕 「この度は必ずあはん。 」と、 嫗の心にも思ひをり。 此たび必あはんと 女の心にも思ひをり。 〔470〕 この翁は、 かぐや姫のやもめなるを歎かしければ、 翁は かぐや姫のやもめなるをなげかしければ。 〔471〕 「よき人にあはせん。 」と思ひはかれども、 よき人にあはせむと思ひはかれど。 〔472〕 切に「否。 」といふことなれば、 せちにいなといふ事なれば。 〔473〕 えしひぬはことわりなり。 えしゐぬはことはりなり。 〔474〕 かぐや姫翁にいはく、 かぐや姫翁にいはく。 〔475〕 「この裘は火に燒かんに、 此皮ぎぬは火にやかんに。 〔476〕 燒けずはこそ實ならめと思ひて、 燒ずばこそまことならめと思ひて。 〔477〕 人のいふことにもまけめ。 人の云事にもまけめ。 〔478〕 『世になきものなれば、 世になき物なれば。 〔479〕 それを實と疑なく思はん。 』 との給ひて、 それをまこととうたがひなく思はん との給ひて。 〔480〕 なほこれを燒きて見ん。 」といふ。 猶是をやきてこゝろみむといふ。 〔481〕 翁「それさもいはれたり。 」といひて、 おきなそれさもいはれたりといひて。 〔482〕 大臣(おとゞ)に「かくなん申す。 」といふ。 大臣にかくなん申と云。 〔483〕 大臣答へていはく、 大臣こたへていはく。 〔484〕 「この皮は唐土にもなかりけるを、 此革は唐にもなかりし[けるイ]と[をイ]。 〔485〕 辛うじて求め尋ね得たるなり。 からうじて取尋[求イ]えたる也。 〔486〕 何なにの疑かあらん。 何の疑あらん。 〔487〕 さは申すとも、 左は申とも。 〔488〕 はや燒きて見給へ。 」といへば、 はや燒て見給へといへば。 〔489〕 火の中にうちくべて燒かせ給ふに、 火のうちに打くベてやかせ給ふに。 〔490〕 めら\/と燒けぬ。 めら〳〵とやけぬ。 〔491〕 「さればこそ異物の皮なりけり。 」といふ。 さればこそこともの皮也けりといふ。 〔492〕 大臣これを見給ひて、 大臣是を見給ひて。 〔493〕 御顔は草の葉の色して居給へり。 ・[御イ]かほは草の葉の色してゐたまへり。 〔494〕 かぐや姫は 「あなうれし。 」と喜びて居たり。 かぐや姫は あなうれしとよろこびていたり。 〔495〕 かのよみ給へる歌のかへし、 かのよみ給ひけるうたの返し。 〔496〕 箱に入れてかへす。 箱に入てかへす。 とぞ有ける。 〔499〕 されば歸りいましにけり。 されば歸りいましにけり。 〔500〕 世の人々、 よの人々。 〔501〕 「安倍大臣は 火鼠の裘をもていまして、 あべの大臣 火鼠の皮ぎぬもていまして。 〔502〕 かぐや姫にすみ給ふとな。 かぐや姫にすみ給ふとな。 〔503〕 こゝにやいます。 」など問ふ。 こゝにやいますなどとふ。 〔504〕 或人のいはく、 ある人のいはく。 〔505〕 「裘は火にくべて燒きたりしかば、 皮は火にくべてやきたりしかば。 〔506〕 めら\/と燒けにしかば、 めら〳〵とやけにしかば。 〔507〕 かぐや姫逢ひ給はず。 」といひければ、 かぐや姫逢給ずと云ければ。 〔508〕 これを聞きてぞ、 是を聞てぞ。 〔509〕 とげなきものをば あへなしとはいひける。 とげなき物をば あへなしと・(はイ)云ける。

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