コロナ インタビュー。 コロナに関するデービッド・アイクのインタビュー

株式会社フードサプライ 代表取締役 竹川 敦史|強いリーダーシップでコロナ禍の事業を高速で進めながら、コロナ後のビジネスを温める|インタビュー|ベンチャータイムス

コロナ インタビュー

『月刊日本』にロングインタビューが掲載された。 「コロナ後の世界」について。 しかしたとえコロナが収束しても、もはや「元の世界」には戻らないと思います。 内田さんはコロナ危機にどんな問題意識を持っていますか。 内田 新型コロナウイルス禍は、これからの世界のあり方を一変させると思います。 「コロナ以前」と「コロナ以後」では世界の政治体制や経済体制は別のものになるでしょう。 最も危惧しているのは、「新型コロナウイルスが民主主義を殺すかもしれない」ということです。 こういう危機に際しては民主国家よりも独裁国家の方が適切に対処できるのではないか・・・と人々が思い始めるリスクがある。 今回は中国が都市閉鎖や「一夜城」的な病院建設や医療資源の集中という、民主国家ではまず実施できない政策を強権的に下して、結果的に感染の抑制に成功しました。 逆に、アメリカはトランプ大統領が秋の大統領選での再選という自己都合を優先させて、感染当初は「まったく問題ない」と言い張って初動に大きく後れを取り、感染が広がり出してからは有権者受けを狙った政策を連発しました。 科学的で巨視的な対策を採れなかった。 この差は、コロナ禍が終息した後の「アメリカの相対的な国威の低下」と「中国の相対的な国威の向上」として帰結すると予測されます。 パンデミックを契機に、国際社会における米中のプレゼンスが逆転する。 中国は新型コロナウイルスの発生源になり、初期段階では情報隠蔽や責任回避など、非民主的体制の脆さを露呈しましたが、党中央が仕切るようになってからは、強権的な手法で一気に感染拡大を抑え込んだ。 それだけではなくて、中国は他国の支援に乗り出した。 中国はマスクや検査キットや人工呼吸器や防護服などの医療資源の生産拠点です。 どの国も喉から手が出るほど欲しがっているものを国内で潤沢に生産できる。 このアドバンテージを利用して、習近平は医療支援する側に回った。 イタリアは3月初旬に医療崩壊の危機に瀕しました。 支援を要請しましたがEUの他のメンバーは反応してくれなかった。 中国だけが支援を申し出た。 人工呼吸器、マスク、防護服を送りました。 これでイタリア国民の対中国評価は一気に上がった。 知り合いのイタリア人も「いま頼りになるのは中国だけだ」と言っていました。 もちろん中国も国益優先です。 でも、トランプは秋の大統領選までのことしか考えていないけれど、習近平はこれから5年先10年先の地政学的地位を見越して行動している。 短期的には「持ち出し」でも、長期的にはこの出費は回収できると見越して支援に動いた。 この視野の広さの差がはっきりした。 コロナ禍への対応を通じて、中国は国際社会を支える能力も意志もあることを明示し、アメリカは国際社会のリーダーシップを事実上放棄した。 コロナ禍との戦いはこれから後も場合によっては1年以上続くかも知れませんが、アメリカがどこかで軌道修正をしないと、これ以後の国際協力体制は中国が指導することになりかねない。 それが「コロナ以後」の政治体制にもつながってくるわけですね。 内田 そうです。 今後、コロナ禍が終息して、危機を総括する段階になったところで、「米中の明暗を分けたのは政治システムの違いではないか」という議論が出て来るはずです。 米中の政治システムを比較してみると、まず中国は一党独裁で、血みどろの権力闘争に勝ち残った人間がトップになる。 実力主義の競争ですから、無能な人間がトップになることはまずない。 それに対してアメリカの有権者は必ずしも有能な統治者を求めていない。 アレクシス・ド・トクヴィルが洞察した通り、アメリカの有権者は自分たちと知性・徳性において同程度の人間に親近感を覚える。 だからトランプのような愚鈍で徳性に欠けた人間が大統領に選ばれるリスクがある。 トクヴィルの訪米の時のアメリカ大統領はアンドリュー・ジャクソンでインディアンの虐殺以外に見るべき功績のない凡庸な軍人でしたが、アメリカの有権者は彼を二度大統領に選びました。 さいわいなことに、これが中国だったら致命的なことになりますが、アメリカは連邦制と三権分立がしっかり機能しているので、どれほど愚鈍な大統領でも、統治機構に致命的な傷を与えることはできない。 少なくとも現時点では、アメリカン・デモクラシーよりも、中国的独裁制の方が成功しているように見える。 欧州や日本でも、コロナに懲りて、「民主制を制限すべきだ」と言い出す人が必ず出てきます。 中国はすでに顔認証システムなど網羅的な国民監視システムを開発して、これをアフリカやシンガポールや中南米の独裁国家に輸出しています。 国民を監視・管理するシステムにおいて、中国はすでに世界一です。 そういう抑圧的な統治機構に親近感を感じる人は自民党にもいますから、彼らは遠からず「中国に学べ」と言い始めるでしょう。 内田 日本はパンデミックの対応にははっきり失敗したと言ってよいと思います。 それがどれくらいの規模の失敗であるかは、最終的な感染者・死者数が確定するまでは言えませんが、やり方を間違えていなければ、死者数ははるかに少なく済んだということになるはずです。 東アジアでは、ほぼ同時に、中国、台湾、韓国、日本の4か国がコロナ問題に取り組みました。 中国はほぼ感染を抑え込みました。 台湾と韓国は初動の動きが鮮やかで、すでにピークアウトしました。 その中で、日本だけが、感染が広まる前の段階で中国韓国やヨーロッパの情報が入っているというアドバンテージがありながら、検査体制も治療体制も整備しないで、無為のうちに二カ月を空費した。 準備の時間的余裕がありながら、それをまったく活用しないまま感染拡大を迎えてしまった。 内田 為政者が無能だったということに尽きます。 それは総理会見を見れば一目瞭然です。 これだけ危機的状況にあるなかで、安倍首相は官僚の書いた作文を読み上げることしかできない。 自分の言葉で、現状を説明し、方針を語り、国民に協力を求めるということができない。 ドイツのメルケル首相やイギリスのボリス・ジョンソン首相やニューヨークのアンドリュー・クオモ州知事はまことに説得力のあるメッセージを発信しました。 それには比すべくもない。 安倍首相は国会質疑でも、記者会見でも、問いに誠実に回答するということをこれまでしないで来ました。 平気で嘘をつき、話をごまかし、平気で食言してきた。 一言をこれほど軽んじた政治家を私はこれまで見たことがありません。 国難的な状況では決して舵取りを委ねてはならない政治家に私たちは舵取りを委ねてしまった。 それがどれほど日本に大きなダメージを与えることになっても、それはこのような人物を7年間も政権の座にとどめておいたわれわれの責任です。 感染症対策として、やるべきことは一つしかありません。 他国の成功例を模倣し、失敗例を回避する、これだけです。 日本は感染拡大までタイムラグがありましたから、中国や台湾、韓国の前例に学ぶ時間的余裕はあったんです。 しかし、政府はそれをしなかった。 一つには、東京オリンピックを予定通り開催したいという願望に取り憑かれていたからです。 そのために「日本では感染は広がっていない。 防疫体制も完璧で、すべてはアンダーコントロールだ」と言い続ける必要があった。 だから、検査もしなかったし、感染拡大に備えた医療資源の確保も病床の増設もしなかった。 最悪の事態に備えてしまうと最悪の事態を招待するかも知れないから、何もしないことによって最悪の事態の到来を防ごうとしたのです。 これは日本人に固有な民族誌的奇習です。 気持ちはわからないでもありませんが、そういう呪術的な思考をする人間が近代国家の危機管理に当るべきではない。 先行する成功事例を学ばなかったもう一つの理由は安倍政権が「イデオロギー政権」だからです。 政策の適否よりもイデオロギーへの忠誠心の方を優先させた。 だから、たとえ有効であることがわかっていても、中国や韓国や台湾の成功例は模倣したくない。 野党も次々と対案を出していますが、それも採用しない。 それは成功事例や対案の「内容」とは関係がないのです。 「誰」が出した案であるかが問題なのです。 ふだん敵視し、見下しているものたちのやることは絶対に模倣しない。 国民の生命よりも自分のイデオロギーの無謬性方が優先するのです。 こんな馬鹿げた理由で感染拡大を座視した国は世界のどこにもありません。 安倍政権においては、主観的願望が客観的情勢判断を代行する。 「そうであって欲しい」という祈願が自動的に「そうである」という事実として物質化する。 安倍首相個人においては、それは日常的な現実なんだと思います。 森友・加計・桜を見る会と、どの事案でも、首相が「そんなものはない」と宣告した公文書はいつのまにか消滅するし、首相が「知らない」と誓言したことについては関係者全員が記憶を失う。 たぶんその全能感に慣れ切ってしまったのでしょう、「感染は拡大しない。 すぐに終息する」と自分が言いさえすれば、それがそのまま現実になると半ば信じてしまった。 リスクヘッジというのは「丁と半の両方の目に張る」ということです。 両方に張るわけですから、片方は外れる。 リスクヘッジでは、「準備したけれど、使わなかった資源」が必ず無駄になります。 「準備したが使用しなかった資源」のことを経済学では「スラック(余裕、遊び)」と呼びます。 スラックのあるシステムは危機耐性が強い。 スラックのないシステムは弱い。 東京五輪については「予定通りに開催される準備」と「五輪が中止されるほどのパンデミックに備えた防疫対策の準備」の二つを同時並行的に行うというのが常識的なリスクヘッジです。 五輪準備と防疫体制のいずれかが「スラック」になる。 でも、どちらに転んでも対応できた。 しかし、安倍政権は「五輪開催」の一点張りに賭けた。 それを誰も止めなかった。 それは今の日本の政治家や官僚の中にリスクヘッジというアイディアを理解している人間がほとんどいないということです。 久しく費用対効果だとか「ジャストインタイム」だとか「在庫ゼロ」だとかいうことばかり言ってきたせいで、「危機に備えるためには、スラックが要る」ということの意味がもう理解できなくなった。 感染症の場合、専門的な医療器具や病床は、パンデミックが起きないときにはほとんど使い道がありません。 だから、「医療資源の効率的な活用」とか「病床稼働率の向上」とかいうことを医療の最優先課題だと思っている政治家や役人は感染症用の医療準備を無駄だと思って、カットします。 そして、何年かに一度パンデミックが起きて、ばたばた人が死ぬのを見て、「どうして備えがないんだ?」とびっくりする。 どういうことですか。 内田 日本はコロナ対応に失敗しましたが、これはもう起きてしまったことなので、取り返しがつかない。 われわれに出来るのは、これからその失敗をどう総括し、どこを補正するかということです。 本来なら「愚かな為政者を選んだせいで失敗した。 これからはもっと賢い為政者を選びましょう」という簡単な話です。 でも、そうはゆかない。 コロナ終息後、自民党は「憲法のせいで必要な施策が実行できなかった」と総括すると思います。 必ずそうします。 「コロナ対応に失敗したのは、国民の基本的人権に配慮し過ぎたせいだ」と言って、自分たちの失敗の責任を憲法の瑕疵に転嫁しようとする。 右派論壇からは、改憲して非常事態条項を新設せよとか、教育制度を変えて滅私奉公の愛国精神を涵養せよとか言い出す連中が湧いて出て来るでしょう。 コロナ後には「すべて憲法のせい」「民主制は非効率だ」という言説が必ず湧き出てきます。 これとどう立ち向かうか、それがコロナ後の最優先課題だと思います。 心あるメディアは今こそ民主主義を守り、言論の自由を守るための論陣を張るべきだと思います。 そうしないと、『月刊日本』なんかすぐに発禁ですよ。 内田 コロナ禍がもたらした最大の社会的影響は「中間層の没落」が決定づけられたということでしょう。 民主主義の土台になるのは「分厚い中産階級」です。 しかし、新自由主義的な経済政策によって、世界的に階級の二極化が進み、中産階級がどんどん痩せ細って、貧困化している。 コロナ禍のもたらす消費の冷え込みで、基礎体力のある大企業は何とか生き残れても、中小企業や自営業の多くは倒産や廃業に追い込まれるでしょう。 ささやかながら自立した資本家であった市民たちが、労働以外に売るものを持たない無産階級に没落する。 このままゆくと、日本社会は「一握りの富裕層」と「圧倒的多数の貧困層」に二極化する。 それは亡国のシナリオです。 食い止めようと思うならば、政策的に中産階級を保護するしかありません。 野党はどこも「厚みのある中産階級を形成して、民主主義を守る」という政治課題については共通しているはずです。 ですから、次の選挙では、「中産階級の再興と民主主義」をめざすのか「階層の二極化と独裁」をめざすのか、その選択の選挙だということを可視化する必要があると思います。 内田 階層の二極化が進行すれば、さらに後進国化すると思います。 ネポティズム(縁故主義)がはびこり、わずかな国富を少数の支配階層が排他的に独占するという、これまで開発独裁国や、後進国でしか見られなかったような政体になるだろうと思います。 森友問題、加計問題、桜を見る会などの露骨なネポティズム事例を見ると、これは安倍政権の本質だと思います。 独裁者とその一族が権力と国富を独占し、そのおこぼれに与ろうとする人々がそのまわりに群がる。 そういう近代以前への退行が日本ではすでに始まっている。 内田 確かに短期的なスパンで見れば、中国のような独裁国家のほうが効率的に運営されているように見えます。 民主主義は合意形成に時間がかかるし、作業効率が悪い。 でも、長期的には民主的な国家のほうがよいものなんです。 それは、民主主義は、市民の相当数が「成熟した市民」、つまり「大人」でなければ機能しないシステムだからです。 少なくとも市民の7%くらいが「大人」でないと、民主主義的システムは回らない。 一定数の「大人」がいないと動かないという民主主義の脆弱性が裏から見ると民主主義の遂行的な強みなんです。 民主主義は市民たちに成熟を促します。 王政や貴族政はそうではありません。 少数の為政者が賢ければ、残りの国民はどれほど愚鈍でも未熟でも構わない。 国民が全員「子ども」でも、独裁者ひとりが賢者であれば、国は適切に統治できる。 むしろ独裁制では集団成員が「子ども」である方がうまく機能する。 だから、独裁制は成員たちの市民的成熟を求めない。 「何も考えないでいい」と甘やかす。 その結果、自分でものを考える力のない、使い物にならない国民ばかりになって、国力が衰微、国運が尽きる。 その点、民主主義は国民に対して「注文が多い」システムなんです。 でも、そのおかげで復元力の強い、創造的な政体ができる。 民主主義が生き延びるために、やることは簡単と言えば簡単なんです。 システムとしてはもう出来上がっているんですから。 後は「大人」の頭数を増やすことだけです。 やることはそれだけです。 ここに、いま私たちが何をなすべきかのヒントがあると思います。 内田 『ペスト』では、猛威を振るうペストに対して、市民たち有志が保健隊を組織します。 これはナチズムに抵抗したレジスタンスの比喩とされています。 いま私たちは新型コロナウイルスという「ペスト」に対抗しながら、同時に独裁化という「ペスト」にも対抗しなければならない。 その意味で、『ペスト』は現在日本の危機的状況を寓話的に描いたものとして読むこともできます。 『ペスト』の中で最も印象的な登場人物の一人は、下級役人のグランです。 昼間は役所で働いて、夜は趣味で小説を書いている人物ですが、保健隊を結成したときにまっさきに志願する。 役所仕事と執筆活動の合間に献身的に保健隊の活動を引き受け、ペストが終息すると、またなにごともなかったように元の平凡な生活に戻る。 おそらくグランは、カミュが実際のレジスタンス活動のなかで出会った勇敢な人々の記憶を素材に造形された人物だと思います。 特に英雄的なことをしようと思ったわけではなく、市民の当然の義務として、ひとつ間違えば命を落とすかもしれない危険な仕事に就いた。 まるで、電車で老人に席を譲るようなカジュアルさで、レジスタンスの活動に参加した。 それがカミュにとっての理想的な市民としての「紳士」だったんだろうと思います。 「紳士」にヒロイズムは要りません。 過剰に意気込んだり、使命感に緊張したりすると、気長に戦い続けることができませんから。 日常生活を穏やかに過ごしながらでなければ、持続した戦いを続けることはできない。 「コロナ以後」の日本で民主主義を守るためには、私たち一人ひとりが「大人」に、でき得るならば「紳士」にならなけらばならない。 私はそう思います。 (2020-04-22 11:14)•

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stwww.surfingmagazine.com : 俳優イドリス・エルバさん、新型コロナ感染の「やらせ疑惑」に反論

コロナ インタビュー

根路銘国昭さん。 1939年、沖縄県生まれ、北海道大学大学院中退(獣医学博士)。 スペイン風邪ウイルスのルーツを解明するなど、ウイルス研究の国際的第一人者。 国立感染症研究所ウイルス第一部呼吸器系ウイルス研究室長、WHO(世界保健機関)インフルエンザ・呼吸器ウイルス協力センター長を歴任。 ハーバード大学国際エイズ治療評価委員、中国河北省政府技術顧問など、世界を代表するウイルス研究者として多くの業績がある。 2001年、出身地の沖縄で生物資源利用研究所を創立し、抗ウイルス作用をもつ植物の研究開発に取り組んでいる。 『インフルエンザ大流行の謎』(NHKブックス)など著書多数。 内外で発表した論文は約250件 ハクビシンもコウモリも被害者 山根 2020年2月3日、上海公衆衛生臨床センターや復旦大学公衆衛生学部などが科学誌「nature」に、重度の呼吸症候群を発症した武漢の食品市場就労者から得たコロナウイルスのゲノム(RNA遺伝子、2万9903ヌクレオチド)の解析結果を論文にして発表しましたね。 以前に中国のコウモリで確認されたSARS様コロナウイルスと、89. 1%の共通点があったという内容です。 このニュースを受けて、SNSでは「コウモリを食べたから感染が広がったんだ」と書く者も出ました。

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「スピード感」。 本誌のインタビューで、都知事は何度もこの言葉を繰り返した。 政界という荒波をくぐりぬけて、首都のトップにのぼりつめるにいたったのは、好機はもちろん危機であっても、迅速に動き、先手を打ってきたからだ。 都知事は、後手後手と批判されている政府のコロナ対策にも先駆けて都政を動かし、一定の効果を生んできている。 都知事は、恐るべき敵を抑え込めるだろうか。 「どんなときも前向きに『この試練を乗り越えれば成長できる』と思うことができれば、人間、強いものです。 52年7月15日、兵庫県芦屋市で生まれた彼女の中学時代のあだ名は「ラージ」。 17歳のとき、石油商をしていた父・勇二郎さんが衆院選に立候補。 自宅に多くの人が出入りすることで、別棟で暮らすことになった小池都知事は母・恵美子さんにこう尋ねた。 「落選したら、どうなるの?」 母の答えも潔い。 「一家心中かしらね」 結果は落選。 お嬢様学校と呼ばれる私立甲南女子学園に通っていた都知事は、学内進学することなく関西学院大学社会学部に進学。 そこも5カ月後に中退している。 「将来性のある言葉を学びたい」 と、いきなりエジプトのカイロ大学へ留学したのだ。 「卒業するまで帰ってくるな!」 両親は反対するどころか、こう言って娘を送り出した。 リスクを恐れず、常に一歩、先へ飛ぶ。 留学中には、第4次中東戦争が勃発。 まだ20代。 さぞ不安だったろうと思いきや、 「留学中に2度、乗るはずだった飛行機が墜落したり、撃墜された経験があります。 そこで『人生いつ何が起きるかわからないのだから』という覚悟が生まれました。 まぁ、普通に考えると、一般的な家庭であれば、一人娘をアラブには出さない(笑)。 でも、今でもそういう両親のもとで育ったことをありがたいと思っているんです」(16年の取材時)と、語っている。 76年、エジプトから帰国後は、アラビア語通訳・講師として活動。 PLO(パレスチナ解放機構)のアラファト議長など、国際的要人のインタビューを次々に成功させ、マスコミの世界へと飛び込んでいった。 26歳で『ルックルックこんにちは』(日本テレビ系)のアシスタント、35歳で、経済ニュース番組『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京系)の初代メインキャスターに抜擢される。 そのときこそが最大のチャンスなんです」(16年)。 「ウィズ・コロナ」のスローガンのもと、彼女は都民の新しい暮らし方を求め、奔走し続けている。 「ノー3密」を都知事が最初に提唱したのは、3月23日の臨時会見でのことだ。 「本日から4月12日までの3週間、《換気の悪い密閉空間》《多くの人が密集する場所》《近距離での会話》の3つの条件が重なる場所を避けるための行動をお願いしたいと存じます」 以後、都知事は繰り返し、「《密閉》《密集》《密接》、この3つの《密》を避ける」ことを強調。 囲み取材の際、報道陣が都知事めがけて密集するのを制止して、「密です、密です」と注意した場面は、瞬く間にネットで拡散。 「ノー3密」は、コロナに打ち勝つ最善の方策として、世代を問わず、私たちの生活に定着した。 また、小池都知事は「ステイホーム」を強く呼びかけ、GWを「ステイホーム週間」と名付けて、「ステイホーム、ステイ・イン・東京、セーブ・ライブス」の3つのSを、新たなスローガンとした。 政府の対応が遅いという批判が出るなか、政府に先駆けるように、都知事は都政を動かしてきた。 本誌のインタビューには、「国がやることと、目の前が現場である自治体ができること、しなければならないことには、若干、時差があるのかもしれません。 ただ、総理や官邸にもずいぶんSOSを含め、お願いや報告をさせていただきました」 危機にひんしたときほど、人はその真価が問われるものだ。 危機におけるリーダーの心構えについて小池都知事はこう語る。 「スピード感と、できるだけ大きく構えることが必要だと思っています。 特に、今回のコロナウイルスについては、まだ、得体が知れないわけです。 薬もまだない。 ワクチンもない。 都民の皆さんにとって、不安以外の何物でもない。 そんななか、私が大きく構えることで、危機や不安がだんだん縮小していけば、それはむしろ安心につながると考えています」 たとえば、感染者数が増え始めていた4月上旬、医療崩壊につながらないよう、都は入院医療態勢の大規模な確保に乗り出した。 重症度に応じた対応ができるよう医療機関の病床確保や、無症状や軽症の人を受け入れるためのホテル等の施設の確保を進めた。 「現在までに、3千300床の病床と宿泊療養用の2千800室のホテルの部屋を確保しております。 いざというときに備えて大きく構えたほうが、皆さんの安心につながると考えました」 5月30日時点で、都内の宿泊療養者は20人に減ったため、段階に応じた病床数に縮小しているが、いつ第2波、第3波がやってこないとも限らない。 そのために今でも大きく構え、備えている。 大きく構えるお手本は、まだ東京が市だった時代、第7代東京市長を務めた後藤新平だという。 「後藤さんは、関東大震災で東京ががれきの山となったとき、誰も考えつかない途方もない規模で、震災後の東京を構築されました。 『大風呂敷』と呼ばれながらも、結果、山手通りや明治通り、行幸通りができたんです。 医師でもあった後藤さんは、日清戦争から帰還した二十数万人の兵士を、瀬戸内海の島で隔離し、コレラ感染などの検疫業務に携わった方でもあります」 「大風呂敷だ」「実現できるわけがない」と、最初から諦め、何もしないことよりも、高い理想を掲げて、果敢に行動する。 それは小池都知事の生き方でもある。 「大風呂敷の後藤新平とは、風呂敷つながりでもあるんですよ。 私は環境大臣時代、『エコバッグの代わりに風呂敷を使いましょう』というキャンペーンをしています。 そのとき日本中から、さらにはアルマーニからも風呂敷が送られてきたんです。 昨年は姉妹都市のパリで、風呂敷展まで開催しました。 それが今度は日本中からマスクが集まってくるんです。 もうね、山ほどいただきました」 5月25日、政府は首都圏の1都3県と北海道の緊急事態宣言を解除。 ようやく全面解除となった。 東京都は、22日に策定した都独自のロードマップ(行程表)に沿って、経済社会活動と都民生活の両立を目指す。 「これまで自粛ばかりお願いしてきましたが、今後は『自粛』から『自衛』。 ぜひ、自らを守ることを心がけていただきたいと思います。 それから、私のモットーに『備えよ、常に』があります。 いつ何が起きるかわかりません。 もし、感染したときにはどうするのか。 そういう発想から、常に備えておくことが必要なのです。 正しく恐れ、常に備える。 それが今だと思うのです」 感染者の減少傾向を受け、6月1日、都のロードマップはステップ2に移行。 店舗や小規模施設への休業要請が緩和されたが、残念ながら、わずか1日で、東京アラートが発動。 レインボーブリッジが赤く染まった。 油断大敵。 備えよ、常に。 「女性自身」2020年6月23・30日合併号 掲載.

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